2016年1月28日 更新

「ガス自由化」・法改正の背景と狙いとは?

電力自由化に続いてガスの自由化も決定しました。その背景や自由化における行政の狙いとは?また、自由化後、エネルギー供給はどのように変わっていく可能性があるでしょうか。

行政がガス自由化に踏み切る背景

行政がガス自由化に踏み切る背景にはどのようなものがあるのでしょうか。
リダイレクトの警告 (29073)

行政の都市ガス小売り自由化に踏み切る背景としては、東日本大震災に伴っての原発の稼働停止による電力の高騰化があげられます。
このまま電気料金が上昇し続けていけば、間違いなく家庭のエネルギーコストが大幅に上昇していくだろうと予測がつく為、料金の上昇を抑えるという発想で行政は電力の自由化を決断し2016年には電力の小売りを全面的に自由化する方針を掲げました。

発電会社と送配電会社を分けることで、他業種からも新規参入しやすい状況をつくり、価格競争を促す事で料金の上昇を抑えていこうという発想です。 ですが、電力業界は長年10社での地域独占体制をとってきた為、既得権保持に向けた動きは根強く、新規参入が進まない可能性もあるとみて、 今回都市ガスの小売りの全面自由化へと踏み切ったわけです。

東日本大震災までは電力会社が力を入れてきたオール電化住宅に押され続けてきましたが、震災後はガスの価値が見直されてきました。
東日本大震災による深刻な電力不足により、先に電力を自由化することが決まりましたが、電力業界独自の性質から自由化が進まないことが懸念されたようです。そこで震災後見直されてきたガスも自由化する事が決まりました。
ガスシステム改革は、競争の活性化を通じ需要家に多様な選択肢を提示し、低廉な料金を実現することを目的としている。本報告書では、2017年をめどに、家庭を含めた都市ガスの小売りを全面自由化することが適当であるとし、新たなガスシステムの在り方や改革の進め方等についてまとめている。

電力・ガスシステム改革等を通じて、産業ごとに存在していたエネルギー市場の垣根を取り払うことで、既存のエネルギー事業者の相互参入や異業種からの新規参入を促すことができる。これにより、エネルギー市場における競争の活性化とエネルギー産業の効率化を促進し、地域に新たな産業を創出するなど、地域活性化へ貢献を目指す。
1つには従来限定的、独占的であった電気、ガスの供給元を増やして企業間の競争を活発にすることにより、経済および地域の活性化を目指すという目的があります。
エネルギー基本計画(平成26年4月11日閣議決定)においては、市場の垣根を撤廃し、電力システム改革と併せて、ガスシステム改革及び熱供給システム改革を一体的に推進することとしています。これを踏まえ、今般、電力、ガス、熱供給に関するエネルギー分野の一体改革を行うことで、総合的なエネルギー市場を創り上げようとするものです
それまで別々に供給されていた電気、ガスなどの各エネルギー分野ですが、自由化でそれらを一体化し、包括的なエネルギー供給が出来る、総合的なエネルギー市場を確立するという目的もあります。

ガス自由化に関する法改正の狙い

経済産業省によれば、ガス自由化に関する法改正についての具体的な趣旨は次のとおりです。
国会議事堂 - 写真共有サイト「フォト蔵」 (29074)

【ガス事業法関係】

1.小売参入の全面自由化
 1.家庭等へのガスの供給の自由化
 2.自由化に伴う事業類型の見直し
 3.LNG基地の第三者利用に係る規定の整備
 
2.ガス導管網の整備
 1.導管事業への地域独占と料金規制の措置
 2.事業者間の導管接続の協議に関する命令・裁定制度

3.需要家保護と保安の確保
 1.経過措置としての小売料金規制に係る措置(経過措置の解除に当たっては競争の進展状況を確認)
 2.一般ガス導管事業者による最終保障サービスの提供
 3.ガス小売事業者に対する供給力確保義務、契約条件の説明義務等
 4.保安の確保

4.法的分離による導管事業の中立性確保
 1.兼業規制による法的分離の実施
 2.適正な競争関係を確保するための行為規制の措置

5.検証規定

【熱供給事業法関係】

1.熱供給事業者に対する規制の合理化
 1.参入規制を登録制とする
 2.料金規制や供給義務などの規制の撤廃

2.需要家保護のための措置
 1.熱供給事業者に対する需要家保護のための規制(契約条件の説明等)
 2.他の熱源の選択が困難な地域における経過措置料金規制
この法律案では、ガスの小売りを自由化、新規参入業者のためのガス導管分離、需要家(消費者)がそれいによって不利益を被らないための保護などについて記されています。
政府は、電力自由化では送配電網を2020年までに、ガス自由化ではガス導管を2022年までに分離する(現時点では大手ガス業者3社対象)ことを義務付けています。(法的分離)
東京電力など電力9社に対しては2020年4月までに送配電部門を、東京ガスなど都市ガス3社には2022年4月までに導管部門を、それぞれ切り離すことを義務付けている。2016年には電力の小売りが完全自由化されることが決まっているほか、ガスについても2017年4月から小売りを完全自由化する法案が国会に提出されることになっている。

電力・ガスの小売り自由化で新規参入する企業などが、インフラである電力の送配電網やガスの導管網を使いやすくするのが今回の法改正の狙い。

現状のように1つの会社が発電と送配電網、ガス製造と導管網を保有していた場合、異業種などの新規参入企業の利用を妨げられ、公平な競争が行われない恐れがあるためだ。分社化を進めることで新規参入や企業間の競争を促し、料金を引き下げやサービス向上につなげるのが法改正の趣旨である。

送配電網やガス導管の「法的分離」とは?

リダイレクトの警告 (29075)

政府によれば、ガス自由化においては送配電網やガス導管の「法的分離」を行うとのことですが、具体的にはどのような形で法的分離をする事になるのでしょうか?
◇法的分離◇

 政府が進める電力システム改革や都市ガス改革で、電気・ガスに参入する事業者の共通インフラとなる送配電網やガス導管を、すべての事業者が公平に利用するための手法の一つ。手法には、ガス導管事業と他の事業の会計を別にする「会計分離」、ガス導管事業を別会社にする「法的分離」、ガス導管の運用を第三者組織が行う「機能分離」、ガス導管の資本関係を完全に分離する「所有権分離」--の4類型がある。ガス生産・販売と導管事業を同一事業者が行う「会計分離」はガスの安定供給に最も適しているが、最も中立性が高いのは「所有権分離」だ。「法的分離」は中立性の確保と、安定的な運用の両面を一定程度満たす方法と位置づけられている。
この場合の「法的分離」とは、それまで限られた業者が独占していた送電網やガス導管を、今後自由化で参入する他業者も法の下で公平に使えるようにすることを指すようです。

自由化で今後予測される事とは?

リダイレクトの警告 (29076)

政府がなぜ電力やガスなどのエネルギー自由化への準備を進めてきた狙いについては上記のとおりですが、ガス、電力などのエネルギー自由化に向けての動きから、以下のような事が予測されます。それは政府の狙い通りとなるのでしょうか。
電力・ガス自由化の衝撃力は、次の「4つの革新」にまとめることができます。

(1)電力とガスの垣根撤廃――明治以来、電力とガスは棲み分けてきたが、1995年以降、大口向けについては相互参入が可能となった。2016~2017年以降は、家庭向けも含めて「電力とガスの業際」はすべてなくなる。例えば、東電は日本瓦斯(関東基盤)、TOKAIホールディングス(静岡基盤)と連携して電力とガスの「セット販売」を計画中。

(2)電力・ガスと他業界との垣根撤廃――他の業界、たとえば石油精製会社、住宅産業、流通産業、通信産業などが電力・ガス事業に参入できる。例えば、JX日鉱日石エネルギーは電気とガソリンをセットで販売可能になるし、ドコモ、AU,ソフトバンクは大手電力と「携帯と電気」のセット販売で提携を模索中。

(3)地域独占の撤廃――たとえば、中部電力が九州で電力やガスを供給できるようになる一方で、大手電機メーカーが全国で家庭向けに電力・ガスを販売することも可能になる。例えば、関西電力は東燃ゼネラル石油と共同で千葉に火力発電所を建設し、首都圏に電力販売を計画中。

(4)グローバル制約の消滅――英・仏・独などはエネルギー産業で先行しており、アジアのインフラ投資にも意欲的だが、2016年以降の日本のエネルギーインフラ市場にも参加してくる可能性が強い。米ゼネラル・エレクトリック(GE)は風力発電装置、水素装置、太陽光最大手の中国インリー・グリーンエナジーは太陽光パネル、米スパークエナジーは電力小売りで自由化後の日本のエネルギー市場を虎視眈々と狙う。

 以上の「4つの革新」で、日本の閉塞的な電力・ガス業界はおそらく2020年前後には想定外の変革時代に突入している可能性が大ではないでしょうか。
電気、ガスの自由化により国内での競争や業務提携などの協力体制が活発になる(例:電気・ガスのセット販売)他、自由化先進国である海外企業の参入なども予測されるため、これを機に日本のエネルギー事情が大きく変わる可能性が高いでしょう。

まとめ

1.行政がガス自由化を進める背景と狙い

・東日本大震災で原発が停止したことによる電力不足と電気料金の高騰
・震災でエネルギーとしてのガスが見直され、需要が増えている
・自由化による競争によるエネルギー業界と地域の活性化

2.ガス自由化に関する法改正の概要

・小売り自由化
・ガス導管網の整備
・ガス導管の法的分離
・需要家(消費者)の保護

3.ガス自由化による今後の影響
・ガス・電力の垣根撤廃
・ガス・電力と他業界との垣根撤廃
・地域の垣根撤廃
・海外企業のガス事業への参入

行政の狙いがどこまで具体的に実現されるかは未知数です。また、自由化によって需要家である私たち消費者が不利益を被る事がないような法整備が進んでいるとみられますが、それもまた未知数。今後の推移をよく見守り、おかしいと思ったら声を上げて行政や業者に改善を求める事も必要となってくるかもしれません。
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