2017年4月6日 更新

全国各地の動向からガス自由化を読む

電力自由化の1年後に始まる都市ガス自由化(以下・ガス自由化)ですが、電力自由化と比べてまだまだ周知度が低いようです。けれども全国各地では既にガス自由化に向けて様々な取り組みがなされています。

1年先に始まる電力自由化はガス自由化にどんな影響があるか?

電力自由化より1年遅れて始まる都市ガス自由化。供給する側のエネルギー業界はその時間差をどのように捉えているのでしょうか。
リダイレクトの警告 (28326)

ところが、自由化は電力は28年、ガスが29年と時間差がある。このため、ガス会社は自由化された電力と、ガスのセット販売を28年から始められるのに対し、電力会社は29年のガス自由化までセット販売が始められないことになる。電力業界はこの時間差に対し、「販売が不利になる」と焦燥感を募らせている。
それでは、日本全国のエネルギー業界はガス自由化に向けてどのように対応しているのかを、それぞれの地域別に見ていきたいと思います。

地域別エネルギー業界の動き(1)北海道・東北地方

電気料金が全国一高いと言われている北海道ですが、ガス料金も同様で突出した料金です。その理由は本州から輸送されてくるので高いのだとされていますが、日本国内ではどの場所でも輸入されてくるLNGやLPGを使っていますので、北海道だけ高いのは何かしらの理由があるようです。原材料の高騰を言い訳にされますが、電力発電は原材料を使い相場の変動が激しいのですが、ガスの場合は直接原料を輸入しており、相場の変動だけで動いています。2017年以前の3年前を見てみると、ガス相場は60%近く下がっているのに、全国平均でもその下げ幅は5%にしか満たないのです。しかもプロパンガスは、1996年から自由化が始まっているにもかかわらず、安くなって来たという話も聞きません。ただし、北海道電力が石狩湾新港で液化天然ガス火力発電所を稼働させる予定ですので、同時にガス市場に打って出る事も予想されます。
北海道や東北では既存の電力会社とガス会社の競争という構図となっていますが、他地域の大手ガス会社もこれらの地域に参入するといった、複雑な動きを見せています。
北海道当別の青空の商用利用可フリー写真素材2538 | フォトック (28339)

一方、道内では北海道ガス(札幌)や旭川ガス(旭川)など10事業者がガス供給事業を行っているが、導管事業は別会社化されず、影響は限定的との見方もある。ただ、北海道電力(札幌)は、18年度に石狩湾新港で液化天然ガス(LNG)火力発電所を稼働させるのに合わせてガス事業への参入方針を示している。電力とガス、双方の市場で北ガスと北電の競争が激化する可能性もありそうだ。
北海道では現時点では地元ガス会社に大きな動きがないものの、北海道電力のガス自由化参入に向けて競争が激化する可能性を秘めているようです。
都市ガス最大手の東京ガスは10日、民営化を目指す仙台市ガスの買収を再検討する方針を明らかにした。顧客数で国内最大規模の公営ガスを手中に収めることで営業地域と事業規模を拡大してコスト競争力を高め、平成29年4月の都市ガス小売りの全面自由化に備える。仙台市は今春までに民間企業への譲渡方針を固め、28年度にも譲渡先の募集を始める見込み。東ガスは市の動向を注意深く見守りながら買収メリットを精査し、念願の「白河の関」越えを狙う。
ガス業界最大手の東京ガスがガス自由化に向けて東北地方に進出。民営化予定の仙台市ガスの買収を検討中。

地域別エネルギー業界の動き(2)関東地方(山梨県含む)

関東地方方面では、すでに東京ガスと東京電力との競争が激化する様相を見せており、東京ガスは以前断念した仙台市ガス買収を2016年に再検討する運びとなっています。光熱費問題は、海外の相場によるところが大きく、ガス業界は組合の結束力が強く、プロパンガスの自由化においては、ほとんど消費者が自由化の恩恵を受ける事が出来ませんでした。その点2016年から全国規模で、電力完全自由化になったおかげで、電力価格は実際に電気料金に反映されており、様々なサービスを含め実質的に安くなっています。2017年からのガス自由化は、プロパンガスのみならず都市ガスも自由化になりますので、両者の競争がいかに上手く消費者に伝わってくるかが大きなカギとなってきます。
首都圏を中心とする関東地方では、電力自由化同様、東京ガスと東京電力との競争が激化する様相を見せているようです。
リダイレクトの警告 (28343)

これまで首都圏市場を独占してきた東電は、火力発電だけで出力4300万キロワットに達している。今後の競争激化を見込み、中部電力と液化天然ガス(LNG)などの燃料調達や火力発電事業の統合を決めた。

東京ガスが電力事業に参入してきたため、東電はガス事業に進出する。ガスの小売りも、17年4月から全面自由化されるからだ。東電は、火力発電所の燃料用に輸入した天然ガスを、自社の導管を使って工場のボイラーなどに供給する。
東京電力とニチガスは10月5日に電力・ガス販売事業で業務提携することを発表しました。

東京電力とニチガスのサービスエリアで一般家庭・法人への小売をする予定です。

電気とガスをセットで契約することによってセット割が適応され、光熱費のコスト削減ができるプランを準備しています。
電力自由化で東京ガスに押され気味と言われている東京電力ですが、ガス自由化に向けて他電力会社や中堅ガス会社との事業統合・業務提携をするなどして東京ガスの攻勢に備える動きが見られます。

地域別エネルギー業界の動き(3)東海北陸地方

リダイレクトの警告 (28345)

東海北陸地方では、ガス会社と電力会社が競争にしのぎを削る一方で、協力体制を組むといった動きが見られます。
北陸電力 中部電力などと共同出資する液化天然ガス(LNG)の販売会社、北陸エルネス(富山市)を子会社化すると22日発表した。6月10日付で中部電が持つ全株式を取得し、出資比率を41%から75%に引き上げる。電力・ガス事業の自由化に伴う競争激化に対応する。
電力自由化でガス会社が電力事業に参入する事に対抗し、電力会社もガス自由化に向けてLNGガス会社の買収などの動きが活発になっています。
静岡ガス(戸野谷宏社長)と中部電力(水野明久社長)は7日、カタールガスとLNG共同購入に関する契約を締結したと発表した。契約期間は2016年から21年までの6年間。契約数量は2社合計で年間約20万t、合計約120万t。静岡ガスが中部電力と共同調達するのは今回が初めて。購入数量は両社が今後協議して決めるが、大部分を静岡ガスが購入する見通し。中部電力との共同購入方式とした理由は、中部電力の購買力の活用や関係強化を狙ったものと見られる。
ガス自由化に向けて電力会社とガス会社が連携してガスを購入・販売する動きも出ています。
中部ガス(中村捷二社長)、中部電力(水野明久社長)、静岡ガス(戸野谷宏社長)は9日、建設中の天然ガス高圧パイプライン「静浜幹線」に接続する「南掛川パイプライン(仮称)」を新たに敷設することで基本合意したと発表した。
3社はパイプライン建設とガス供給を行う新会社を2012年4月に共同で設立する。資本金は2億5000万円。中部ガスと中部電力が各40%、静岡ガスが20%出資する。
ライバル業者同士がガスの購入のみならず、ガス供給に欠かせないパイプラインを共同で敷設するという動きも出ています。

地域別エネルギー業界の動き(4)近畿地方

リダイレクトの警告 (28347)

近畿地方でも、関東地方と同様に、電力会社vsガス会社の競争が激化しています。
電力販売の全面自由化を控え、火花を散らす関西電力と大阪ガスが、天然ガス販売で激しいつばぜり合いを繰り広げている。電力自由化の陰に隠れがちだが、実はガス販売でも全面自由化の議論が進んでいるからだ。原子力発電所の停止による電力不足で攻め込まれがちだった関電だが、ガス販売で反撃を始めている。電力の次はガスでも仁義なき戦いが本格化しそうだ。
実は関西電力は既にガス事業に参入しています。
関電のガス事業参入は12年。当初はタンクローリーによる小規模販売が中心だったが、その後、自由化範囲の拡大とともに、パイプライン(導管)の建設や大ガスの導管を借用した供給などで販売量を急拡大。初年度の販売量は液化天然ガス(LNG)換算で1万トンにも満たなかったが、23年度以降の年間販売量は90万トン程度で推移している。この量は実は東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの都市ガス大手3社に次ぐ規模の業界大手なのだ。
ガス事業でも業界大手となっている関西電力と2017年に電力事業に参入する大阪ガスとで、電力とガスの双方で熾烈なシェア争いが始まっています。

地域別エネルギー業界の動き(5)中国四国地方

中国四国地方では、広島ガスなど地元都市ガス事業者が情報連携を密にすることで、電力・ガス双方の自由化に備えています。
リダイレクトの警告 (28355)

広島ガス 「電力・ガス小売全面自由化による情報システムへの影響についての情報交換会」開催
 広島ガス(株)の呼びかけで開催され、当部会会員11事業者が出席(出席者20名)。富士通総研による講演「電力・ガス小売全面自由化によるシステムへの影響」の後、中国四国地方の都市ガス事業者の情報連携について意見交換が行われ、「中四国都市ガス事業者システム情報交換会」(事務局;広島ガス(株))が設立された。
広島ガスと中国電力は4日、海田町明神町の広島ガス工場跡地の一部約4万平方メートルに10万キロワット級のバイオマス石炭混焼発電所を建設する計画を明らかにし、環境影響評価手続きに入ると発表した。評価書の届け出は平成28年度になる見込み。

 広島ガスは会見で、今回の中国電力との共同事業について「電力小売りの全面自由化を前に総合エネルギー事業者として発展を目指したいため」などと述べ、電力事業参入への積極姿勢を示した。
ここでも中部地方同様、電力会社・ガス会社の双方が電気ガスを含む「総合エネルギー事業者」として業務を提携する動きが見られます。

地域別エネルギー業界の動き(6)九州・沖縄地方

九州・沖縄地方では、離島の分沖縄の都市ガス料金に少し割高感があるようですが、全国平均よりは安くなっています。また九州は全域で、都市ガスの料金は全国から見ても非常に安いのですが、プロパンガスに至っては場所によっては都市ガスの2倍近い料金であり、プロパンガスはかなり割高感があります。これは都市ガスが、地下に埋め込まれた導管を通じて供給されていますので、導管が配置されていない地域では供給する事が出来ないからです。つまり、プロパンガスは導管の配置されていない地域でのみ使用されますので、ボンベに詰める手間やそのボンベ自体にもコストがかかっており、これを配送する為にもいちいちトラックを使い、人の手を借りなければならない為に非常に割高になっています。ただ最近、バルク供給方式
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九州では電力会社・ガス会社の双方がガス自由化・電力自由化の両方に向けて独自の動きを見せているようです。
九州電力が日本ガスへ液化天然ガスを販売
九州電力株式会社(福岡市中央区)は27日、日本ガス株式会社(鹿児島市)と液化天然ガス(LNG)の長期売買契約を締結したと発表しました。 約14万戸にガスを供給している日本ガスとの契約量は、年間約5万トン。契約期間は2016年からの15年間で、九電が海外から調達するLNGを国内のガス事業者に向けて供給するのは初めてだということです。

九電は2015年に4月に「日本一のエネルギーサービスを提供する企業グループを目指す」という中期経営方針を策定。今後は電気だけでなく、ガスも含めたエネルギーの供給を通して地域社会の発展に貢献していきたいとしています。
九州電力は2016年11月に海外から調達したガスのガス事業者への販売を始めました。
西部ガスの酒見俊夫社長は11日、グループで提供するサービスの利用状況に応じて、貯めて使えるポイント制度の導入や、ガス料金の値下げを検討していると明らかにした。電力やガスの小売り全面自由化に備え、サービスを充実させることで顧客から「選ばれる会社」を目指す。 
九州大手の西部ガスはエネルギー供給におけるサービスを強化することで、九州電力や他の事業者との差別化を図ろうとしています。

まとめ

一口にガス自由化といっても、上に挙げた地域別エネルギー業界の動向は数ある中のほんの一例にすぎませんが、それだけでも供給する側のエネルギー業界の対応がかなり違うということがわかります。今度は消費者である私たちが動く番です。よりお得なサービスを受けるためにも、ただ漫然と推移を見守るのではなく、自分が住む地域におけるガス自由化への動きや、企業から提供されるサービスをよく見極め、何が得で何が損であるかを考えながら後悔のない選択をしたいものですね。
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